和名『眼球日誌』。国際補助語エスペラント、文学、芸術、人類、政治、社会などについて
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密やかな結晶
 これは、すごい物語を読んだ。『薬指の標本』の原型のような話。というのは鯨はこの作品と『薬指の標本』とで、隠し部屋と標本室、記憶を失わない編集者R氏と標本技師、そして「しみ込む」と「侵し始める」の対比を行ったからだ。それにしてもこの2作品のモチーフは何なのだろう?小川洋子風の他人へのかかわり方の希望、なのだろうか?それとも彼女なりの死へのアプローチ?
 舞台はある記号のような島の物語、そこでは「消滅」がおこる。そして「消滅」したものはそれに関係するものと一緒に人々の記憶からも消えてしまう。それはフェリーであったり、鳥であったり、木の実であったり、カレンダーであったり。主人公の「わたし」は小説家だが、小説が消えたとき、人々は本を焼き、図書館を焼き、「わたし」は小説の書き方を忘れた。しかし人々のなかには記憶の「消滅」をまぬがれる人たちがいる。彼らは秘密警察によって探し出され「記憶狩り」にあい、消される。それは「わたし」の母親であり、R氏である。「わたし」はR氏を自宅の隠し部屋に匿う。そしてその部屋は記憶の残留する場所となっていく。小説が「消滅」する前に、「わたし」は声や言葉の「消滅」を恐れ、それを題材に小説を書いていた。やがて、決定的な「消滅」が島をおそう。
 消滅と死、そして他人とのかかわりの意味について深い沈黙をもたらす作品。
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