和名『眼球日誌』。国際補助語エスペラント、文学、芸術、人類、政治、社会などについて
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性交のためだけに存在する女の子
 自転車で営業に廻っていたら、平日に急行が停まるか停まらないか位の規模の駅の前に、新しく巨大複合型商業施設が建てられていた。鯨はひどく疲れていた。駐輪場に自転車を置いて、その施設の二階にある書店で立ち読みしつつ涼んでいると、文庫化されたマンガ棚の前に一人の女の子が立っていた。白いおとなしめな服に黒いキュロットを履いている。そして、生脚をさらけ出し、踵に厚みのあるサンダルの上に浮かんでいる。地味な女の子であったが、一目見るなり鯨はその女の子が「性交のためだけに存在する女の子」、それも「百パーセント、性交のためだけに存在する女の子」であることに気付いた。もちろん最初はまさかと思った。黒髪でおとなしそうで真面目そうで、生気と自分への自信がなさそうな女の子だ。きっと処女で、近くのK女子学園の目立たない一生徒なのだろう。前髪で額と頬を隠しているのが自信のなさの現れである。とても彼女が「 性交のためだけに存在する女の子 」だとは信じられなかった。百人が百人、信じられないと言うだろう。でも、そうだった。彼女はまさに「性交のためだけに存在する女の子」だった。
 彼女は棚から棚へと移動する。高校古文の棚と高校世界史の棚を背伸びしながら漁り、それから西欧諸語の棚を眺め、世界史の棚に移動した。鯨は一瞬だけ、ヘタリア好きの腐女子に過ぎないのではないかと疑ったが、すぐにそれは否定した。鯨の本能が叫んでいる、彼女は「性交のためだけに存在する女の子」であると。鯨も意を決して世界史棚へ行き、彼女の右隣に急接近した。すると彼女は鯨を避けるように新書棚に移り、江戸の「粋」について書かれた本をパラパラめくっている。自分がそんな女の子であることを自覚しつつ、赤の他人である鯨に見破られるのを避けようとしているのが見え見えだった。しかし、それと同時に他人の鯨に自分の本質を見抜いてもらいたがっているようにも見えた。思わず「世界史が好きなんですか? 鯨も好きです」で口火を切り、「ところで、性交のほうはどうですか? 」と彼女の本質を突いてもいいような気がした。でも、鯨はそう訊くだけの勇気がなかった。訊いたら最後、近くの女子トイレの個室で、彼女のよく熟れた西瓜に、鯨油を最後の一滴まで搾りとられること間違いなしだったろう。だから鯨は、彼女が世界史の名言集をレジで買って書店を出るまで、ただ見守っているだけだった。そう、腰砕けの鯨は「性交のためだけに存在する女の子」を目の前にして、ただ見守っているだけだった。
 もし今度、街で「性交のためだけに存在する女の子」を見つけたら、必ず声をかけようと思う、「ところで、性交のほうはどうですか? 」と。
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